カザフスタンと「一帯一路」 大統領の最優先はインフラ整備

ナザルバエフ大統領が2014年11月に発表した経済政策「ヌルルィ・ジョリ(明るい道)」は、国家基金が有する資金を経済構造を変革する交通やエネルギーなどのインフラ整備に充てるべきと表明したものだ。この経済政策により、中国との国境に位置するホルゴス経済特区などにおけるインフラ整備に大規模な資金供与が約束された。

5月に北京で開催された国際フォーラムでも、ナザルバエフ大統領は「ヌルルィ・ジョリ」とシルクロード経済圏構想の枠組みの中でカザフスタンと中国との協力関係が始まったことを強調した。さらに、中国の構想について、自身が長年掲げる「大ユーラシア」経済圏構想を補完するものであり、上海協力機構やユーラシア経済同盟にとって非常に有益であるとも語った。カザフスタンにとって、「一帯一路」構想を、他人事ではなく、自国の利益に結び付く重要な構想だと考えていることは間違いないだろう。

一方、カザフスタンの主要なパートナーといえば、今も昔も、政治でも経済でもロシアだ。連邦崩壊後、独立を達成した旧ソ連諸国の中で、ソ連の後継国となったロシアから距離を置く国が増える中で、カザフスタンはロシアと協力関係をむしろ強化し、旧ソ連圏の協力関係を維持するよう主張してきた。

独立当時から大統領を務めるナザルバエフは、旧ソ連国で結成した独立国家共同体(CIS)をさらに発展させた統一経済圏の創設を1990年代から掲げており「ユーラシア経済圏」提唱の第一人者だったと言っても過言ではない。

当時の構想はあくまでも旧ソ連諸国をその範囲としており、ロシアを軸とするものだった。カザフスタンがロシアとの関係維持を重視してきた理由は、世界最長の国境を接しており、国境付近を中心にロシア系住民が3割以上生活しているからだ。カザフスタン北部の工業地帯は、ロシアのウラルや沿ヴォルガといった資源産出地域や工業地域と経済的な結びつきも強い。したがって、2015年1月に発足したユーラシア経済同盟(EEC)の発展にも積極的に関わってきた。


▲(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員
上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶応義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。

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