- Home
- 寂しさという壁の中【365文字の編集長コラム】
寂しさという壁の中【365文字の編集長コラム】
- 2019/6/10
クラス替えや年度初めの登校が憂鬱(ゆううつ)だったのは、自己紹介の存在に他ならない。自分の名前を口にした時のクラスメートの反応は、全方位から品定めされるような感覚に陥らせた。家族構成について話すときはストレスが倍増した。兄弟がいないことを知られたくなかったからだ。寂しい奴だ、過保護な家で育っていると思われることが恥ずかしかった
▲理由はよくわからない。寂しさは多くの人にとって共通の課題だが、それを抱えていることを共有するのは難しい。電話もテレビもSNSも、孤独を解消するために広がったような気がするが、いまだにその解消法は求められ続けており、打ち明けにくい我々の性質も変えることができないままだ
▲古希を過ぎ、我が子を手にかけねばならなかった人も、打ち明けられない壁の中で生きていたのだろう。息子もそうだったのではと思えてならない。