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- ベトナム進出企業 製造業からサービス業へ
ベトナム社会主義共和国
人口9370万人で、国民平均年齢は30歳。公用語はベトナム語。首都ハノイは北部の中心。ホーチミンは経済の中心。中心部に位置する第3の都市ダナンでも日本企業の進出が始まる。
ベトナムに進出する日系企業の業態は、製造業からサービス業に移行しつつある。これまでは安価な労働力を求めた進出が中心だったが、消費地としてのベトナムを狙う企業が増えている。一方で、社員の定着率が低く、人材確保に悩む企業も多い。現地採用の社員に幹部登用への道が閉ざされてることが離職の原因となっているようだ。ベトナム進出を支援する4つのコンサルティング会社に話を聞いた。
単価5000円超の美容室が人気
税理士、社労士など士業を母体とする海外進出支援会社のガルベラ・パートナーズ(東京都港区)は、約100件のベトナム進出企業に関わってきた。これまでは製造業の進出が多かったが、人件費が上がり、最近はラオス、ミャンマー、カンボジアなどに変える企業が増えつつある。今は飲食業と美容関連が多い。
街には美容院、エステサロン、歯科医院(審美歯科)がここ3年で増えている。日本人美容師が開業した美容院は、日本や外国からの駐在員、芸能人、現地富裕層を集め、5000~7000円に料金を設定する。現地の一般的な美容院はカットで500円程度だ。
ベトナムに常駐する同社の齋藤みどり氏は、ホーチミン市で2020年に予定される地下鉄の開通が、さらに大きな経済の変化を起こすと見る。現地市民の移動手段はもっぱらバイクが中心だが、彼らが地下鉄に乗るようになると、特に女性たちが服、化粧、ヘアにお金を使い始めるというわけだ。
一方、化粧品の販路拡大に苦労する企業を見続けてきたのは、4年前から大阪府の海外進出サポートデスク事業を受託するアイクラフト(神戸市)の浮田英治取締役だ。ベトナムには中国、韓国、台湾から低価格で良質な商品が入っている。高級品はブランド力の勝負となり大手の独壇場だ。他社との違いが明確でない「少しいい商品」は相手にされにくい。
高い離職率に悩む進出企業たち
製造業の進出が止まったわけではない。アイクラフトには、サポートデスクを通じた相談が年間50件ほどやってくる。その大半が金属加工業者など中小メーカーの案件で、吉村工業のように、技能実習生を迎える企業が人材確保の側面から現地工場をつくる話が多い。製造業では縫製のような人海戦術が使えれば成功しやすいが、電化製品は材料の調達に苦労するという。
「原材料調達の難しさは、企業一覧がどこにも存在しないことにある」と話すのは、5年前からベトナムでコンサル業務を行うフォーバル(東京都渋谷区)の神山英生氏だ。企業一覧がないため、紹介や情報収集を通じてどこの会社が何を作っているか、一社ずつ訪問して調べるしかない。そんな側面からも、展示会は一度に取引先を増やせる有効な機会となっている。
フォーバルベトナムは5年間で400社以上の進出を支援した。多くは縫製、靴、アパレルなどの製造業で、支援の大半は人材確保に関わるものだ。特にマネジメントができる人材を企業は求める。だが、何もないところから見つけるのは難しい。そこで進出企業の中にいるベトナム人留学生から友人をたぐって社員を集めていくという。
農村部では仕事が少ない。そのため、人数を集めなければならない場合、農村の実力者を通じて若者に声をかけるのも有効な手段だという。だが、農村部には会社も少ないため、入社する住民たちに企業に勤めるルールを伝えるのに苦労する。「あいさつをする」「時間を守る」「休むときは連絡する」といった基本を学ばせる研修は、要望が多い人気メニューの一つだ。
ガルベラの齋藤氏は、優秀な人材にこだわるよりも、取りあえず採用することを勧める。ベトナムに限らず、東南アジアでは転職のたびに給与が上がるため、1年で転職する人が多いからだ。背景には、就職サポートや新人研修制度がないベトナムの企業風土がある。新人は採用現場で敬遠され、経験のある中途社員が取り合いになる。
ベトナムでは公的提出書類はすべてベトナム語で作成しなければならない。そのため右腕となるベトナム人の存在は必須だ。「一番良いのは日本でベトナム人を採用し、一定期間働いてもらいながら、進出とともに人材を送り込むこと」(齋藤氏)
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。
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