▲昨年11月22日・23日に開催された「ハラールエキスポジャパン」。116小間が出展し、6,698名が来場した

飲食・アパレル・交通… 2030年 4人に1人まで増加

訪日観光客の増加を受け、イスラム教徒をターゲットにした観光サービスが広がりを見せている。専門展示会の開催が相次ぐほか、イスラム教徒対応に取り組む企業が増加している。

2002年に小泉純一郎元首相とジョージ・ブッシュ元大統領(子)が「居酒屋会談」をおこなったことで知られる西麻布の居酒屋「権八」。今年6月からイスラム教徒向けメニューの提供を開始した。外国人観光客の来店が多いことからはじめたサービスだといい、店舗を運営するグローバルダイニング(東京都港区)は、今後は他の地域でもイスラム教対応を検討する。

企業がイスラム教対応を進める理由は、教徒数の多さだ。米国調査会社のピュー研究所の調査によると、全世界のイスラム教徒数は16億1931万人(2010年)。2030年には21億9015万人に達するといい、世界人口の4人に1人がイスラム教徒になる。

一方、ただ待つだけではやって来ないのも、イスラム教徒ならではの難しさだ。イスラム教では「豚を口にしてはいけない」「女性は肌を露出してはいけない」「1日5回の礼拝」などさまざまな戒律が設けられている。日本政府観光局がインドネシア人の旅行者200名を対象に行った調査によれば、約3割が前述のようなイスラム教に対応する環境が整っている国を旅行したいと回答している。

対応に取り組む企業は、特に飲食業に多い。イスラム教徒向けに日本の観光情報を紹介するハラールメディアジャパン(東京都渋谷区)の山崎寛斗氏は「調味料にアルコールが含まれていてはいけないし、豚由来の添加物も使用してはいけない。牛肉や鶏肉であっても、加工時にお祈りをささげながら調理したものでなければ口にしてはいけない。こうしたイスラム教に対応するものを『ハラール』といい、飲食店の中には、ハラール対応の食材を専門に扱う海外の卸業者を使うケースもある」と語る。

こうした参入障壁があるにもかかわらず、ハラール対応に取り組む飲食店は増加している。同社が運営するハラール対応レストランのポータルサイト「ハラール・グルメ・ジャパン」には現在756店の店舗が登録。3年前の開設時から4.5倍にまで件数を伸ばしている。

▲JR東日本が東京駅に設置した礼拝堂。カーペットには聖地の方角を示すコンパスが描かれている

飲食業界以外も、イスラム教徒対応が進む。東京都台東区は区内の飲食店を対象に、ハラール認証を取得する経費を最大10万円まで助成する制度を実施。また、栃木県佐野市もイスラム教徒向け観光地図を発行するなど、誘致に注力を見せている。JR東日本は今年6月、東京駅・丸の内北口の「JR東日本訪日旅行センター」内に礼拝室を設置。定員2名の小さな小部屋で、外国人客の受け入れを強化した。

▲イスラムファッションにも関心が集まっている

アパレル業界もイスラム教徒向け市場にビジネスチャンスを見いだす。ユニクロは16年6月からイスラム教徒の女性が着用する「ヒジャフ(頭髪や体を隠すための布)」を日本の一部店舗で販売。ファッションブランドのH&Mもイスラムファッションをモチーフとした商品を展開するなど、対応を進める。山崎氏は「イスラム女性というと、肌を隠し、全身黒で統一、控えめなファッションをしているという先入観が強いが、実際は違う。若い女性はさまざまなブランドに関心を持ち、オシャレな恰好で観光地を巡り、スマートフォンで撮った画像をインスタグラムに投稿している。いわば、普通の観光客と変わらない」と語る。


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国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平

2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

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