デービッド・アトキンソン氏「根拠のない観光対策に要注意」

小西美術工藝社(東京都港区)
デービッド・アトキンソン社長(51)
1965年、イギリス生まれ。オックスフォード大学を卒業後、アンダーセン・コンサルティング、ソロモンブラザーズ証券を経てゴールドマンサックス証券へ入社。取締役、共同出資を務めたのち退社。2009年に小西美術工藝社へ入社。著書に『新・観光立国論』など。

 

インバウンド2千万人時代の観光立国のあり方

2020年に外国人観光客4000万人を目指す国策を受け、企業・官庁はどのような観光事業を施策すべきなのか。小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長は昨年12月にパシフィコ横浜で開かれた『IME2016』の中で開かれた講演の中で、インバウンドマーケティングについて解説した。

 

観光大国ドイツに焦点を

日本では今、2020年までに訪日観光客を4000万人まで増加させるという目標を持って、全国各地でさまざまな観光産業への取り組みが行われています。当社は神社・寺院など文化財の修復工事業者としてさまざまな自治体から依頼を受けるのですが、その中で、日本で行われている観光産業のほとんどが、きちんとした数字に基づいたデータマーケティングが行われていないという問題がわかってきました。

その一つとしてあげられるのが、地方の観光地で取り組んでいる「多言語対応」です。 観光地で行っている多言語対応のほとんどは、英語・中国語・台湾語・韓国語です。中にはフランス語まで対応しているものもありますが、ドイツ語はほとんどありません。

では、実際に観光で日本を訪れる外国人や、これから日本がターゲットとすべき外国人とは、どの国の人たちなのでしょう。 UNWTOアジア太平洋センターのデータを基に、世界のアウトバウンド市場の規模を見てみますと、図のようになります。1位は中国で、支払額2922億ドルに対して渡航者数は127万人。たしかに支払額は大きいですが、一人あたりの支払額はさほど高くないことがわかります。

さて、問題にしたいのが、ドイツとフランスです。さきほど申した通り、日本の観光地ではフランス語に対応しているところはあるものの、ドイツ語に対応している場所はほとんどありません。しかし、実際はアウトバウンドの支払額・人数のいずれも、フランスよりドイツの方が圧倒的に高いのです。

ドイツの人口は現在約8200万人ですが、アウトバウンド人数は14年時点で8300万人にのぼるといわれています。つまり、数値によればドイツ国民は全員が必ず海外旅行するほど、アウトバウンド産業が豊かな国と言えるわけです。

対して、フランスは人口約4200万人に対してアウトバウンド人数は2820万人。人口の約半分が海外に出ない人たちというわけです。当然、アウトバウンドで使う金額も低く、ドイツの半分程度しかありません。

では、日本の観光地は、どうして海外旅行に行きもしないフランス人に向けて言語対応しているのでしょうか。同じ欧州をターゲットにするのであれば、海外旅行が盛んなドイツに対応したほうがいいはずです。

同じように、全国の観光地で対応がほとんど見られないのが、カナダです。カナダは年間3230万人が海外渡航し、294億ドルを使用するアウトバウンド大国です。ですが、日本の観光地の対応を見ると、アメリカに対応しているところは多いものの、カナダに対応しているところはないのが実情です。

これ以外にも、日本の観光産業がきちんとしたデータマーケティングに基づいていないものが非常に多いです。これから日本のインバウンド産業をさらに強化していく上で、正確な数値を基にしたマーケティングに沿った戦略を立てることは必要不可欠となります。ですので、まずはしっかりと現状をとらえ、正確な分析とともに戦略を立てる必要があると言えるでしょう。


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国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平

2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

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