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極寒開発、広がる可能性~深掘りロシア経済4~
- 2017/12/25
- ロシア
▲9月に開催された「第3回東方経済フォーラム」の様子。4カ国の首相が顔を揃えた
エネルギーだけでなく農業、医療、自動車も
極寒開発、広がる可能性
~深掘りロシア経済4~
■極東は日ロ関係発展の玄関口となるか
極東開発の実現には、ロシア政府がいくら努力してもそれだけでは不十分であり、外国からの支援、外国企業の投資が必要不可欠だということはロシア側も十分に理解している。さまざまな投資誘致政策の一環として、2017年8月にはウラジオストクを訪問する外国人に対する電子ビザの発行がスタートし、2018年にはカムチャツカやサハリンでも同様の措置が導入されるようだ。
ロシアにとっては首都モスクワから遠く離れた極東地域だが、日本にとっては最も近いロシアである。成田空港からウラジオストクへ2時間半、札幌からサハリンへはわずか1時間半という距離だ。 日本と極東の関係は歴史的にも、経済的にも深い。ソ連崩壊直前には極東を経済特区とする積極的な開発政策がとられ、日本も関心を示した。だが、日本のバブル崩壊とソ連崩壊後のロシアの経済混乱によって極東開発に対する関心は日本でもロシアでも衰退した。
しかし、資源豊富な極東のサハリンにおける石油ガス開発プロジェクト、「サハリン1」と「サハリン2」には日本も参入しており、そこで産出された石油やガスを加工したLNGが日本に輸出されている。また、LNGプラントの建設プロジェクトにも日本が関与している。エネルギー分野を軸に日本と極東の経済関係は発展してきた。 ロシアにとって日本は貿易相手国としてまだまだ存在感が小さい国であるが、極東地域だけを見ると、日本は重要なパートナーである。
特に2011年3月の東日本大震災以降、エネルギー資源の需要が高まる日本は極東から天然ガスを大量に購入するなど、日ロ関係におけるロシア極東の重要性は拡大しているのである。 こうした中で日ロの経済関係は政治・外交によっても後押しされている。
安倍晋三総理とプーチン大統領の良好な関係はさまざまな報道で伝えられている通りであり、首脳会談は9月の東方経済フォーラムに行われたもので19回となった。
今回のEEFに日本からは、世耕経産相兼ロシア経済分野協力担当大臣、河野外相、加藤厚労相なども同行し、大臣同士の面談も多数行われている。中でも日ロ協力推進の責任を担う特別なポストに就いている世耕経産大臣は、ロシアの第一副首相、経済発展大臣、エネルギー大臣と複数の会談を行った。また、日本の厚生労働大臣がロシアを訪問するのは日ロ国交正常化以降初めてだった。
2016年5月に安倍総理がプーチン大統領に提案した「8項目の協力プラン」があり、この中の1つが極東地域の産業振興だ。今、日本政府が旗振り役となって日本企業の極東進出を推奨している。日本と近接するロシア極東での協力プロジェクトの実現は日ロ双方に利益があることの表れであろう。これまでエネルギー分野に限られてきた極東での日ロ協力が農業、医療、自動車など多様な分野に広がる可能性が出ている。 ロシア側が切に望み、日本側も国が後押しする極東への進出にさまざまな日本企業が関心を持つこと、それによって日本から最も近い外国ロシアとの関係の発展が日本にとっても有益となることが期待されている。
「8項目の協力プラン」とは
出展:https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_seisaku-gaikou20161216j-08-w400
(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶應義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。