仮設トイレ その時、外でできますか?

あなたの街に大地震が発生し上下水道が破裂、水が止まったときのことを想像してほしい。

困るのは、飲み水、風呂、トイレ。風呂は我慢。飲み水は買うしかない。トイレは最悪、外で済ます。それよりも、電気とガスの復旧の方が気になる。

昨年のゴールデンウィーク、大地震に襲われてから2週間過ぎた熊本に立つまで、私はおおむねそのように考えていた。考えが変わったのは、熊本空港から被害が最も大きかった益城町市街地に移動して1時間がたったころだ。
ゴジラに一蹴されたかのように崩された益城の町を歩いていた時に、ふと、便意をもよおした。初めはあまり気にしなかったが、容易ならざる事態に気づいたのは、役場、コンビニ、ドラッグストアと町内のどこを訪ねてもトイレ使用を禁じていることを知った時だ。

地震から2週間以上たっても下水道が復旧していない益城町の中心部では、仮設トイレ以外に用を足せる場所がなかった。だが、熊本に着いたばかりの私には設置場所がわからない。1時間半近く歩いて、避難所となっている益城町立スポーツセンターの仮設トイレにたどり着いた時、最初に復旧させるべきは上下水道より他にないと、考えを改めた。

仮設トイレ

取材に訪れただけの記者ならまだよい。だが、自宅の損壊を免れた住民も、トイレだけは避難所まで出向かねばならず、それが面倒で不自由な避難所生活を続ける人もいた。 実は、スポーツセンターまでの道すがら、公衆トイレがあった。事件現場のようにガムテープで入り口がふさがれていたが、そんなものに構っていられず中に入って、息をのんだ。男性トイレは小便器が3基、個室が3室並んでいたと思う。だが、個室のドアまでたどり着けなかった。男性トイレの床一帯に汚物が溢れていたからだ。 瞬間的に頭に浮かんだのは動物園だ。檻の中の方がよっぽど奇麗だと思った。

人間の文明社会のもろさを見た気がして恐ろしくなった。
災害が起きたとき、私のように「外で済ます」と考える人が大勢いたとしたら、あの公衆トイレのような惨状が、一晩にしてそこかしこで生まれるのではないか。その光景、悪臭は私たちから自信を奪っていくだろう。そんなとき、清潔に保たれたトイレは、自信や安寧を与えてくれる存在になると思う。


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎

国際イベントニュース編集長 東島淳一郎

2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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