カザフスタンと「一帯一路」 中国の存在感 経済で急拡大

  • 2017/7/10

輸出先はトップ 投資も盛ん

当初、ロシアと中国が主導する常設的な地域協力組織、上海協力機構(SCO)は欧米をけん制するための協力機構としてとらえられた。同時に、機構の内部でロシアと中国が中央アジアに対する影響力をめぐってけん制し合っているという見方も広がっていた。

そうした外からの評価とは裏腹に、加盟国間では安全保障だけでなく、経済関係強化に向けた動きも活発化している。多国間のバランスの取れた外交を重視するカザフスタンは特にSCOを重視している国の1つだ。最近ではインド、トルコ、イランなど周辺国がオブザーバーとして参加し、関心を強く示している。その結果、ユーラシア地域における重要な地域協力の枠組みとなっている。

カザフスタンと中国の関係は、国交樹立以来、主に多国間協力の枠組みの中で発展してきたが、最近は二国間の関係強化が加速している。そのきっかけとなったのも「一帯一路」構想だと言って過言ではない。

2013年9月に中央アジアを歴訪した習主席は、カザフスタンのナザルバエフ大学で演説した際、ユーラシア各国の経済連携をより緊密にし、相互協力を深め、経済発展を促すために新しい協力モデルとして「シルクロード経済ベルト」を建設する構想を打ち出した。中国にとって、欧州まで至る大経済圏の創設には双方の間に広がる中央アジアとの関係強化を欠かすことはできない。中でも、最も広大な面積を誇り、経済発展も著しいカザフスタンとの連携は重要である。

カザフスタンの最大の貿易相手国は、独立以来、ロシアが総額でトップを維持しているが、最近は中国の台頭が目覚ましい。特に、輸出については、中国がロシアに勝る勢いである。また、カザフスタンに対する投資額でも、2010年ごろから中国の存在感が目立っている。

ただし、カザフスタンが「一帯一路」構想を積極的に支持する理由は、同国における中国の経済的な影響力の大きさだけが理由ではない。「一帯一路」構想は、2014年11月にナザルバエフ大統領が発表した新しい経済政策「ヌルルィ・ジョリ(明るい道)」の目指す方向性と一致していることも大きな要因となっている。


▲(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員
上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶応義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。

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