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日本型IRの経営について聞く
- 2017/3/16
IR推進法(通称、カジノ推進法)が昨年12月に成立し、国会周辺や誘致を目指す地方自治体が、情報収集に動いている。カジノ経営に精通した日本人の元には、全国から関係者が日参しているという。ベトナムとカンボジアで自らカジノを経営した浅野哲氏と、情報サイト「カジノIRジャパン」を運営するIR関連事業者向けの経営コンサルタント小池隆由氏に、日本型IRの経営について聞いた。
日本のサービスが通用する
私がカジノを併設するIRの経営に初めて関わったのは2010~12年の2年間です。場所はベトナム第3の都市ダナンでした。知人を介して外国人客が多く集まる「フラマリゾートホテル」で、エンターテインメントエリア全体の経営を任されました。ホテルの地下1000㎡には、カジノの他に個室のカラオケルーム、100席のミニシアターがありました。
私が関わるまで、カジノは長い間休業していました。私は日本式の接客スタイルをスタッフに対し徹底しました。顧客の入店に合わせてスタッフが並んだり、店舗の外にある門を通過した時点で顧客情報がスタッフに行き渡るシステムなど日本式の「おもてなし」サービスを持ち込んだのです。 ダナンには同様の競合施設が複数ありましたが、日本から来る旅行客をはじめ海外の富裕層を顧客として取り込むことに成功しました。その後に株を売却した時には、当初の5倍の値段がつきました日 。本式のサービスは世界のVIPに通用します。せっかくのチャンスを、外資企業に取られてしまうのは、もったいないのではないでしょうか。
IRはまちづくり事業だ
商品だけを比べた場合、カジノの差別化は難しくなっていると感じます。世界中のカジノで同じようなゲームで遊べるからです。だからこそ、カジノの経営は日本人でも十分に可能なのではないかと考えます。カジノ経営は収益性がある程度確定しています。海外の事例を見てみると、シンガポール、マカオ、韓国など、アジア各国の政府の管理下にあるカジノは総じて収益が安定しており、上場している運営会社も多くあります。施設数が制限されているため、顧客の争奪戦が起らないのです。日本でも今の議論では、全国で10カ所程度に限定する方向で進んでおり、アジアの各施設と同様の状況が期待できると思われます。
IRはまちづくり事業です。収益性が確保された権益事業だからこそ、社会性と責任が求められます。国の議論が施設数を限定しているのは、自治体の枠を超えた広域エリアを商圏と捉えているからです。つまり、それぞれの施設が還元すべき責任の範囲も、広域エリア一帯だと考えなければならないでしょう。同時に、地域のまちづくり事業だからこそ、経営は地元のことがわかっている人間が主導しなければならないでしょう。
国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。