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- 「手売りに戻れと言うのか」~シリーズ五輪の影~
▲小売店舗のインテリアとして使われることが多い
五輪・パラリンピック開催に伴い、東京ビッグサイトが約2年間使用できなくなる。同会場で開かれる約300の展示会は、同期間にりんかい線・東京テレポート駅付近に新設される仮設展示場へと移るが、仮設展示場の床面積は現在のビッグサイトの約4分の1。このままでは多数の展示会が開催できなくなる見通しだ。これに対して、展示会に出展することで商売相手を見つける全国の中小企業からは悲鳴が上がっている。
東急東横線代官山駅から徒歩10分。住宅街の細い路地を抜けた先に立つマンションの1室に居を構えるインテリアメーカー・トゥエルブトーン(東京都目黒区)の角田崇社長は、ため息を漏らす。年間売上高は約2800万円。そのほとんどが、その年に開かれる展示会に出展して得た顧客からのものだ。展示会が開催されなければ、自ら顧客を訪問して売り歩かなければならないが、夫婦2人で営む同社にはそれを実行する余力がない。以前勤めていたゲーム開発会社では、新規事業として紙製パイプで作った高さ30㎝ほどの玩具の販売に取り組んだ。販売先は近所にある玩具店。店を探しては飛び込みで商品を売り込んだ。1日かけても訪問できるのは10店舗ほど。そのうち卸先として契約できるのは、1日に1件あれば御の字だった。2009年に独立してからは、手のひらサイズの桐製収納箱『PLAY-DECO』を製造・販売し、インテリアショップなどの小売店舗に卸した。「手売りには限界がある」と、デザイン関連の展示会『デザインタイド』に出展したところ、会期中に数十件の卸先が見つかった。以降は、手売りの代わりに年間2本ほどの展示会に出展し、会期中に行われる1日30件程度の商談が売り上げの生命線になっている。「ネット販売をはじめたらいい」と言われるが、ネット上の売り上げで生計を立てるのは楽ではない。「起業してすぐにネット販売をはじめたが、売り上げは7年やって10万円程度にしかなっていない」と角田社長は話している。
国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。