若き経済の司令塔オレシキン ロシア ~近くて、遠い国~(第8回)

民間金融機関から財務省へ転身

2016年11月、年末に差し掛かったロシアで衝撃が走った。ウリュカエフ経済発展大臣が汚職疑惑で拘留されたのだ。マントゥロフ大臣(5月10日号参照)の訪日に続いて16年7月に来日したウリュカエフ経済発展大臣は、東京で講演を行った。その際、ロシアの経済状況について、低迷が続いていることを認める一方、近い将来プラス成長に転じるとの期待を表明した。また、日ロ関係については、両国の貿易が減少傾向にあることを指摘する一方、農業、製造業といった具体的な分野での共同プロジェクトの実現、人材育成分野での協力、地域間協力など幅広く両国の協力を発展させることに関心を示した。

そんなウリュカエフの辞任後、ロシアの経済発展の責任者という重要なポストである経済発展大臣の後任候補には、メディアで様々な人物の名前が挙がった。数日の空白期間を経て、新大臣に決まったのは1982年7月生まれと、在任閣僚の中で最若手となるオレシキンだった。

モスクワ市で生まれ、高等経済院を卒業したオレシキンは連邦中央銀行、ロスバンク、VTBキャピタルなどロシアの主要な金融機関を経て、2013年9月から財務省に勤務した。同省の長期戦略企画局で局長を務め、2015年3月から財務省次官に就任していた。経済発展省のライバル省庁とも言われる財務省の次官が経済発展大臣に就任するという異例の人事異動だった。

17年3月には、オレシキン大臣が新設ポストとなる日本との貿易経済協力担当相を兼任することになった。日ロ貿易担当相は、日本とロシアの経済協力を担当するポストとして、16年9月に設置されており、世耕経済産業大臣が就任している。日本の経済産業省とロシアの経済発展省はまさにパートナーとなる組織であり、両国政府を挙げて二国間の経済協力や貿易関係の発展を目指している。

両国が新しい大臣ポストを新設してまで強化を目指す日ロの貿易関係に目を向けると、16年の日ロ貿易高は、輸出入合計で163億8346万ドルとなり、対前年比21・5%の減少となった。ただし、月別に見た場合、上半期は対前年比で40~50%縮小しているが、下半期は10~25%程度の縮小に留まっており、12月だけを見ると対前年比で6・9%増とプラスに転じた。特に、日本からの輸出は6月以降増加傾向を示しており、主要な輸出品である乗用車が、新車で5月以降、中古車で8月以降、増加している。一方、ロシアからの輸入についてはまだ停滞傾向が続いており、主要な輸入品である石油や天然ガスといった鉱物資源燃料が輸入額・輸入量ともに減少している。

ロシアの経済・産業発展は、比較的若い閣僚の手に委ねられている。世界で最も影響力を持つ人物とも言われるプーチン大統領からの信頼を受けて、日本との経済協力に強い関心を示す主要大臣たちの動向は注目である。日本とロシアの経済・貿易関係の発展にはまだ課題も多いが、彼らの活躍次第ではさらなる発展が期待されるだろう。


▲(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員
上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶応義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。

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