▲インテックス大阪が8月8日に開催した安全大会で、ヘルメット着用義務化が参加者に伝えられた

危険な展示会の作業現場 請負会社10社安全対策推進協会を設立

展示会でのブース施工や備品運搬に関わる作業をデザイン会社や備品レンタル会社から請け負う事業者10社が、従業員の作業環境を向上させることを目指し、(一社)イベント展示会安全施工推進会を設立した。今月1日からは、インテックス大阪が脚立や高所での作業時にヘルメットの着用を義務付けた。展示会の現場は、施工作業の安全基準を取り締まる法律がない。実務にあたる民間事業者が、現場作業員の安全を守るため業界基準を設けた格好だ。背景には、深夜に及ぶ労働環境が嫌われ人材が確保できなくなりつつある請負会社の実態がある。

背景に作業員の人材不足

イベント展示会安全施工推進会を設立したのは、展示会などイベントの設営現場で、デザイン会社や備品レンタル会社から現場の作業を請け負う会社だ。展示会ブースの設営であれば、大工やデザイン会社の現場監督とともに会場に入り、ブースを区切る壁面を立てる作業や、荷物の運搬、ポスターやパネルの設置などを行う。特別装飾と呼ばれる特注の木工ブースの組み立てなどは大工職人が行うが、それ以外に会場設営で生じる多くの作業を担当している。

作業を行うのに特別な資格は必要ないが、設営時間が非常に短い展示会の現場では、作業の流れを把握した経験のあるスタッフが担う部分が大きい。また、基本作業の研修を行う請負会社も多く、需要は大きい。設立に参加した10社は特に展示会現場を得意としている請負会社ばかりだ。請負会社に仕事を発注するのは、出展企業からブースのデザイン・施工を受注したデザイン会社やブース設営会社、あるいは、そこから会場で使う椅子や壁面パネルなどの備品の貸し出しを受注したレンタル会社が多い。

請負会社が出展企業から直接仕事を引き受けることはほとんどないが、大工職人を必要とせずに設営できるブースは、彼らが施工していることが多い。

これだけだと、危険な作業は少ないように思えるが、実際の施工現場では高所作業のすぐ隣で重い荷物を積んだ荷車が動くことは多い。経験豊富なスタッフばかりがいるわけではない。出展企業が自ら設営するなど、現場に入ったことがない人が現場にいることも多い。「自分たちで気をつけるだけでは、自らの安全を確保できない状況。だからこそ、業界として安全に対する意識を高める必要がある」と会長に就任したマッシュ(東京都千代田区)の渋谷紀之社長は話す。

インテックス大阪が10月から高所作業でのヘルメットと安全帯の着用を義務付けたのも、現場で作業するスタッフの安全を確保するために実施したものだ。

業界関係者の話では、展示会の施工現場で死亡事故が起きたこともあるという。トラックから荷物を載せた台車を降ろす時に、パワーゲートと呼ばれる昇降機の上で台車に積んだ荷物が崩れ、作業員が下敷きになった

表に出にくい事故の実態

「大小含めると多くの事故が現場では起きている」と話す関係者は多いが、表に出てくることは非常に少ない。今回、全国の主要な展示会場に、設営撤去作業中に起きた事故の件数について聞いたが、どこからも回答を得ることはできなかった。

デザイン会社の一人は「設営中の事故が公になった場合、展示会の名前で事故が起きたと出回ることになる。主催者や出展企業に迷惑をかけるため、自分のところで何かが起きても公表することは考えにくい」と話した。

一方で、請負会社はスタッフの確保が容易ではない。人手不足に加え、真夏でもエアコンが使われないような現場が嫌われ、人件費を上げるだけでは雇用もままならないのが実情だ。安全対策の向上は、請負会社にとって雇用対策としての側面もありそうだ。



国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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