【医療インバウンド10年の軌跡】第6回 医療渡航ビザの利用者

 2011年1月にできた医療渡航ビザは、医療機関における治療行為だけではなく、人間ドック、健康診断、温泉治療、療養まで幅広い範囲が対象になる。制度の核は、医療目的で日本に来たときの施設、例えば温泉療養だとしたら、「温泉療養に1カ月滞在した方ががいい」と言ってくれる病院や、診療所があればいいという、おおらかな制度だ。

付添同伴者も同じ期間滞在できる

 歯科医が6カ月の治療プランをつくると、6カ月の医療滞在ビザが下りるのが医療渡航ビザです。日本で整形手術して、術後の様子も観測したいので1年間ビザが欲しいとなったとき、整形外科が治療計画を立てると、そのとおりにビザが下ります。

 医療ビザは、2010年に新成長戦略に入りましたが、それまでは医療を目的にした日本の在留資格はありませんでした。短期滞在のなかに、療養という言葉があっただけです。医療を成長の柱にするにあたり、日本には医療目的の在留資格がない。そんなタイミングで早急につくったため、湯治もあれば、歯の検査、治療と受け入れ範囲が広くなったのでしょう。

 期間は最長3年です。例えば、肝臓がんで1年に1回治療のために来るとなれば、3年分のビザが下ります。以前はここまで便利なビザがなかったので、「親族訪問」などと理由をつけていたのです。今は、特にビザが必要な中国やロシアでは、医療滞在ビザをとる方が多いです。しかし、まだ制度を知らない人の方が多いというのが現状です。
 この制度は、同伴者の滞在も認めています。付き添いが必要な場合も家族や親戚を同伴者の欄に記入すれば、同じビザが下ります。治療する人はそれどころではありませんが、同伴する人は滞在中に観光にも行きたくなるかもしれません。同伴者が滞在するホテルの手配や観光案内といった仕事も発生します。
 ただし、検診の場合、医療滞在ビザは出ますが旅行の一貫として検査を受けるという考え方が成り立つので、観光ビザでも可能です。治療の場合は、医療滞在ビザをとるほうがいいでしょう。ベトナムから白血病で緊急来日した人もいましたが、大使館も緊急でビザを発行しました。

 医療滞在ビザの件数は、2011年は70件でした。6年後の16年は1307件です。当初から中国人が44%と多かったのですが、16年は88%に伸びました。観光客全体では、多い順に中国・韓国・台湾と続くのですが、医療観光においても中国人が多くを占めています。

 厚生労働省の外郭団体、日本医療教育財団が指定している外国人患者向け医療機関認証制度というのがあります。外国人向け表記や、制度が整っている医療機関を認証する制度です。43施設・病院が登録されています。

 JCRという国際的な格付け制度もあります。アメリカの基準でできた制度です。国際的な認証制度なので、世界的に通じます。現在日本は25位です。
 アメリカには健康保険制度がないので、個人で保険を買うことを説明しましたが、治療費も高いので、保険会社も安い病院でやろうとします。保険会社が「メキシコに行ってください」と指示をするのです。その時、英語が通じるか、話せるドクターがいるかを見極めようというものです。日本で登録された第一号は鴨川の亀田総合病院でした。その後医療インバウンドが始まり、一気に日本の病院も増えました。日本にも認証制度はあります。医療コーディネーターの試験もあります。



(一社)日本旅行業協会
国内・訪日旅行推進部
青木志郎副部長

旅行代理店大手の日本旅行に20年勤務。10年前から医療診断・治療目的で来日する外国人と日本の医療機関をつなぐ医療渡航支援業務に携わる。


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