イギリスのEU離脱問題 ブレグジットの現場から

 ブレグジットの合意案がイギリス下院で大差で否決されたのは1月15日、29日には代替案7つのうち5つが否決されました。「合意なき離脱」の回避に向けメイ首相の議会に対する働きかけは続きますが、解決の糸口はなかなか見えてきません。現地市民の生活に変化はあるのでしょうか。英国・ロンドンと、オランダ・アムステルダム在住の記者に、身の回りで感じたブレグジットの影響について聞きました。

ロンドン 市民の買いだめ始まる

 合意なき離脱か、離脱協定を結ぶか。イギリスのメディアは、確定しないブレグジットのニュースで持ち切りです。ロンドンでは、デモが頻繁に行われ、大規模なものは、マスコミにも取り上げられます。昨年10月、ロンドン市内中心部で、2度目の国民投票を求める一般市民70万人が集まり、日本でも報道されたのではないでしょうか。

 この原稿は1月23日に書いていますが、数日前も、ロンドン中心部から少し離れた住宅街で、強行離脱に反対するEU残留派200人ほどが参加するデモ行進がありました。報道されることはないこの程度の小規模デモは各地で頻繁に行われています。

 生活における変化でいえば、市民の間で買いだめが始まっています。1月17日のブルームバーグ紙では、政府がスーパーマーケットやドラッグストアなどの小売業に対して、商品の在庫を確保するよう促しているという報道がされました。18日のガーディアン紙は、インスリンなどの薬を買い込む市民の様子を伝えました。

 日立製作所が17日にイギリスでの原子力発電所建設の凍結を発表したことは日本でも大きく報道されたと思います。東原敏昭社長は撤退理由について「民間企業としての経済合理性の観点から判断した」と話しましたが、翌日のBBCでは「ブレグジットが原因で原発の建設が頓挫した」という識者のコメントが報道されました。原発の代替案として風力発電が主力電源化できた場合、電気代が下がる可能性も報道されています。実現すればブレグジットがもたらすプラスの変化と言えますが、さて、どうなることでしょう。

 イギリスで生活する一消費者として気になるのは、食料品、飲料品、薬品などの生活必需品がブレグジット後にどう変わるのかということです。1月18日のガーディアン紙では、合意の有無にかかわらず、生花の販売は滞るという報道がされました。現在、生花をロンドンから注文すると、オランダの会社から翌日届けてもらうことができます。しかし、ブレグジット後はそれは難しくなるようです。

ソニーとパナが本部移転 アムステルダム

 オランダ・アムステルダムでの日常生活において、ブレグジットの影響を感じることは、今のところありません。しかし、企業の動きには現れ始めています。

 目立つのは、イギリスに本社を置いていた企業が、オランダに移転していることです。日系企業では、ソニーがオランダの首都アムステルダムに、この春新会社を設立します。現在、エレクトロニクス事業を展開するソニー・ヨーロッパの本部をロンドン郊外に置いていますが、アムステルダムの新会社は、このソニー・ヨーロッパと統合されるようです。パナソニックもヨーロッパ本社を昨年アムステルダムに移しました。

 ブレグジット後は、イギリスの企業がEUの企業と輸出入を行う場合、高い関税を支払う可能性が否めません。オランダに会社をおくことで、ブレグジット後もEU内での輸出入を滞りなく行うのが狙いです。

 オランダ当局も企業誘致に積極的です。大企業の本社が移転してくれば、従業員とその家族も移住してきます。現地スタッフの採用も考えられますから、新たな雇用も期待できます。イギリスからの企業移転はオランダにとってメリットが多いのです。

 ブレグジット後のオランダで、生活に影響が出そうなものを挙げてみます。スーパーで売られているイギリス製品で最初に思い浮かぶのは、Walkersのショートブレッドや、YorkshireGoldの紅茶などでしょう。ブレグジット前後の価格の変化に注目しつつ、そろそろ買っておこうと思います。

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