中国の富裕層向けに仕掛けたPET検診

北京駐在時代、アンチエイジングの治療でスイスに富裕層を送る中国の旅行会社を見ていた青木氏は、大阪のPET検診センターから持ち込まれた海外富裕層の送客ツアーに、可能性を見出す。両者をつなぎ、独占契約を結ばせると、2012年には3泊4日で100万円を超える高額ツアーに年間250人の中国人富裕層がやって来た。

日本の医療サービスをうけに来日する外国人の目的は、大きく4つに分類できます。健康診断治療予防医療リハビリテーションです。整形美容も治療の一つに入ります。医療インバウンドを検討する地域や組織は、この4つから、何を選ぶのか考えるのが良いでしょう。


▲医療インバウンドの目的は、健康診断、治療、予防医療、リハビリテーションの4つに分類できる(写真はイメージ)

健康診断には、人間ドック、PET検診、ガン早期発見、脳ドックなどがあります。旅行会社は健康診断を取り扱うのが得意です。病気を治すことは旅行会社の定款にはありませんが、健康診断は旅行会社に親和性があります。健康診断という切り口なら旅行会社が強いと思います。

PET検診については、2008年から中国の富裕者層をPET検診のために日本に呼ぶツアーを私がはじめました。当時は医療観光という概念はなかったのですが、大阪にある富裕層向けの会員制PET検診施設から相談を受けたことがきっかけでした。非常に大きく立派な施設ですが、国内の人口が減る中で日本の富裕層だけでは経営が成り立たないという懸念から、私が務めていた会社に「海外の富裕者が来ることがあれば、声をかけてほしい」と相談がありました。

北京に駐在していた時に、医療観光を専門にしている現地の旅行会社が、スイスの企業と提携し、富裕層を送るプランを見ていました。中国の旅行会社の担当者から「わざわざスイスに行くツアーが軌道に乗った。日本も十分医療は進んでいるので、企画できないか」と話を受けていました。

大阪のPET検診センターと中国の旅行会社をつなぎ、2008年12月に契約を結びました。しかし、当時の上司は半信半疑でした。旅行業界において商品は真似されやすいものです。宿泊場所や食事がわかると、ライバル店舗が「うちはあちらより5000円値下げします」と話をもちかけます。収益を削って競争するのです。ただ、医療観光は事情が異なります。品質を担保しなければなりません。安い代わりに検診がおざなり、では顧客が満足しないからです。
その旅行会社もスイスで経験を積んでいたため対策をしていました。価格競争を避けるため、大阪の施設と独占契約を結びました。スイスでもアンチエイジングをやろうと思うとその旅行会社に申し込まねばならず、価格競争を起こさせない予防策を張っていたのです。

始めてみると年間70人くらいの方が来ました。2012年には250人になりました。検診が1泊2日で50万円。日本に3泊4日滞在し、総額100万円以上の高額ツアーです。旅行会社としては、手間はかかる一方、生産性は高いのです。中国の旅行会社も力を入れて宣伝してくれたので、PET検診は中国の富裕者層に浸透しました。今も当時の記憶があるのか、中国の富裕層には、日本でPET検診したいと言う人がいます。価格競争に陥らない長期展望を持つことが重要だと思い知りました。


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