日本酒の輸出が伸びている。2016年度、日本から海外に向けて輸出された総額は187億円となり、前年に比べ19.9%伸びた。8年連続で過去最高を更新し、10年前に比べると2.4倍になった。世界的にすしや日本料理店が増えたことと、日本食ブームに引っ張られたのが要因だ。一方で、国内消費量は減少が続き、生産量の減少も歯止めがかからない。大手酒造メーカーに続き、中小の蔵元も海外の展示会に出展し、市場開拓に乗り出している。

中小の蔵元、海外展示会へ続々

国内消費は減少続く

1928年創業の平和酒造(和歌山県海南市)が海外展開を本格化したのは2005年からだ。現在は、東南アジア、アメリカ、ヨーロッパに販路があり、海外販売比率は売り上げの1割になった。販路の開拓も自社で行い、昨年、ニューヨークで開催された「The Joy of SAKE」に初出展した。来場者には、酒販店のバイヤーや外食事業者に加えて、ブログやSNSでプロアマ両方の日本酒ファンをフォロワーに持つインフルエンサーも増えている。皆、大事な商談相手だ。

出羽桜酒造はドイツの「ProWein」に出展した

1892年創業の出羽桜酒造(山形県天童市)も1999年から輸出に力を入れており、25カ国と取引する。今年はドイツ・デュッセルドルフで開催される欧州最大のワイン展示会「ProWein」に出展した。現地のソムリエたちの間でも日本酒に対する正しい理解はほとんどないことから、酒米を持ち込み醸造方法から説明する映像を流した。輸入業者との取引も決まった。

品評会での受賞歴も多い老舗の2社が海外進出を強化する背景には、日本酒の国内消費が減少していることがある。国税庁の発表によると2016年度の国内全体の日本酒生産量は42万7000リットルで、前年に比べ4%、10年前に比べると15%減った。酒類全般の生産量もこの10年で11%減っており、アルコール消費の縮小には歯止めがかからない。日本酒製造国内トップの白鶴酒造(兵庫県神戸市)は年商348億円で前年に比べ0.7%減少したが、そのうち8%を占める海外売り上げは5年前から二桁成長が続いている。

一方で、中小の蔵元は、売り先を海外に頼りすぎることに抵抗があるようだ。生産量が限られているため、突然取引が止まることが一番恐ろしい結果につながる。そのため、海外との取引が増えすぎることに及び腰になってしまう。「販売店が持っている販路で海外に出て行くこともあるが、日本国内で売れていれば海外展開は不要と考えている」という寒紅梅酒造(三重県津市)・増田明弘専務の言葉は、多くの蔵元の本音のようだ。

縮小傾向とはいえ、毎年必ず一定量を買い入れてくれる酒販店との取引が、大きく減ることも、しばらくなさそうだ。

酒造での酒販売 外国人は免税

昨年10月、外国人観光客向けの酒類販売において法律が改正され、酒蔵での販売に限り、酒税が免税されることになった。制度が適用される酒蔵は、以前から消費税も免税されており、外国人観光客は安く酒を買うことができる。酒蔵が多い地方でのインバウンド消費を拡大し、日本酒のファンを増やして輸出量を増やそうという試みだ。政府の後押しもあり、全国の酒蔵で、外国人観光客を呼び込む「酒蔵ツーリズム」を拡大しようとする取り組みが進む。

5年前から酒蔵ツーリズムに取り組む今西酒造(奈良県桜井市)には、昨年1年間で4000人がやってきた。大半は日本人だが、外国人客も増えつつある。

衛生上の問題から酒蔵見学は行っていないが、利き酒をしながら、酒造りの歴史や文化を伝える内容だ。地元の主婦をガイドとして育て、地域振興にも一役買っている。

観光庁が昨年度実施した調査では、667の酒蔵が観光客を受け入れていると回答した。このうち、14.2%は外国人の来訪がなく、33.9%が1割以下と答えた。「欧米豪等から日本ならではの文化・体験を求める旅行者が、日本の伝統的なお酒である日本酒、焼酎、泡盛等の酒蔵を訪れているようだが、引き続き酒蔵ツーリズムの取り組みを推進していく必要がある」(観光地域振興部・観光資源課)

複数の酒蔵がある地域では、秋田、埼玉、長野のように行政や地域の組合がツーリズム振興に取り組む事例もある。だが、インバウンドの継続した集客に成功したところは少ない。

すでに高い成長率を見せる日本酒の海外展開だが、挑戦はまだ始まったばかり。この先、大きな可能性を秘めていそうだ。


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国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎国際イベントニュース編集長 東島淳一郎
2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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