▲飛騨市が行ったロケハンツアー。観光地ではなく、撮影しやすくマイナーなスポットを紹介

映画・ドラマのロケ誘致で地域振興

映画やドラマのロケ地を誘致しようとする地方自治体の動きが高まっている。作品を見たファンが撮影地を観光に訪れる「聖地巡礼」で地域の産業振興につなげようという狙いだ。こうした「ロケツーリズム」に対しては観光庁も地方誘客事業として支援を行うなど地域連携に向けた動きが加速しており、今後も各地のロケ誘致合戦は過熱しそうだ。

神奈川県綾瀬市役所の1階に、1冊のノートが置かれている。タイトルは「メモリアルノート」。聖地巡礼に訪れた市民や観光客が記念として一筆残すために設置されたもので、中を開くと、市内だけでなく、熊本や仙台など遠方から訪れた人もいる。

昨年放送されたTBSドラマ「コウノドリ」で、綾瀬市役所の中庭や屋上がロケに使われた。放送以来、撮影地を訪れるファンが後を絶たない。綾瀬市ではこれまでロケに使われた撮影スポットと地元グルメを紹介する観光地図を配布するなどして、聖地巡礼するファンの行動力を地域の観光振興につなげようとしている。

綾瀬市が市内でロケの受け入れを開始したのは、2016年4月のことだ。地元企業や商工会、市民などと共同でロケ受け入れの支援を行う組織「綾瀬ロケーションサービス」を発足。作品の制作者などから撮影の依頼があった際には、市内で撮影が可能なスポットを紹介し、許可申請の支援を行うほか、エキストラとして参加できる市民への協力要請なども代行する。現在、同団体にエキストラとして登録されている市民の数は320名に達しており、これまでに市内で撮影された作品数は96作品に上るという(1月末現在)。

官民連携で製作受け入れ態勢を構築

食産業の活性化に

▲各市が製作したロケ地を紹介する観光パンフレット。ご当地グルメの紹介などもしている

綾瀬市がこうしたロケ誘致事業に向けた取り組みをはじめるきっかけとなったのが、10年に策定された「産業振興マスタープラン」だ。市の産業振興に向けた10カ年計画をまとめたもので、市内の商業を活性化させるために地域のグルメ産業を振興することが盛り込まれた。産業振興部・商業観光課の吉澤寛子氏は「マスタープランを受けて市民と共同でご当地グルメの開発に取り組むことになったのですが、ただメニューをつくるだけでは一過性のブームにしかならないとの懸念も強くありました。そこで、継続的に市内に人を呼び込むためにロケ誘致に取り組み、聖地巡礼とグルメ振興の相乗効果で地域振興につなげようと考えました」と語る。

こうして開発されたご当地グルメが、市にゆかりを持つ「高座豚」を使ったメンチカツ「あやせとんすきメンチ」だ。市内の飲食店が共同で開発し、現在は市内8店舗で販売されている。市が発行するロケ地を巡る観光地図にも販売店舗が紹介されており、販売開始から2年弱で3万7000食が売れたという(1月末現在)。「ロケで市内を訪れた俳優にも試食してもらうほか、料理研究家などにも開発に協力してもらいました。中には、SNSなどで紹介してくれる俳優もおり、宣伝効果としては抜群でした。撮影地を訪れて、ご当地グルメを味わうまでが聖地巡礼の一環になっているようです」(吉澤氏)

便利屋にならない

同じように、17年4月からロケ誘致に取り組み始めたのが、岐阜県飛騨市だ。撮影の受け入れ支援に取り組むほか、昨年10月には制作関係者を呼んで市内の撮影スポットを巡るツアーを実施した。商工観光部の横山理恵氏は「有名な観光地はあえて外し、廃校になった校舎や文化施設などを紹介しました。撮影する側としては一回使った場所は使いづらいようで、逆に、周りに建物が少ない場所や空き家などは撮影しやすいようです」と語る。

制作サイドの要望は、ほかにもさまざまある。映画や大河ドラマの場合は撮影まで比較的期間があるが、バラエティ番組の場合は企画から撮影までの期間が1週間程度しかないことも多い。そのため、首都圏からのアクセスも重要で、ホテルの手配やロケ弁選びも大切なポイントだ。「撮影の支援を行う一方で、しっかりと後の観光振興につながるよう、撮影風景の活用や作品に関わる肖像権などの使用に関する手配も行います。そうすることで、放送と同時に観光誘客に向けた施策ができるのです」(横山氏)


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p1050331 国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

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