観光で稼げ―冬の沖縄①― スポーツ観光で県外から7万人超

観光シーズンを終えた冬の沖縄に、多くの観光客が集まっている。目的は2~3月に集中して開催されるプロ野球チームのキャンプだ。長年キャンプの聖地として選ばれ続けた歴史を武器に、野球ファンを県内に誘致する動きが加速している。

キャンプでファン呼ぶ

沖縄県の観光産業において長年の課題となっていたのは、冬季期間の誘客策だ。夏季はマリンスポーツやバカンス目的に人が集まるが、冬季は観光客を呼ぶ資源に乏しい。そこで目を付けたのが、野球をはじめとするスポーツのキャンプだ。

県のスポーツ振興課の德嶺竜二氏は「冬季も温暖な気候であるため、昔から県内でキャンプを開くというチームは多かった。もっとも古いものでは、北海道日本ハムファイターズが40年ほど前から名護市でキャンプを開いていると聞いている。キャンプの誘致に関しては各市町村が行っており、キャンプに伴う観光客誘致事業に関してはもともと地元のコンベンションビューローや民間企業などによる協議会が行っていた。そのうちの観光誘致事業を県が数年前から引き継いだ」と語る。

10万部の無料誌配布

県が観光客誘致のためにはじめたのが、2~3月に県内で開かれるキャンプ情報をまとめたウェブサイトのオープンとガイドブックの発行だ。2018年は沖縄市や那覇市、久米島など16カ所で14球団がキャンプを行っており、その中には2軍キャンプや韓国リーグのチームのキャンプも含まれている。これらのキャンプ日程や開催地を地図上に集約するほか、各球団の人気選手の紹介、各キャンプ地の観光情報などを一冊のガイドブックとしてまとめた。ガイドブックは各市町村役場に加え、コンビニやホテル、レンタカー事業所、空港、駅で無料配布しており、今年は10万部発行しているという。

球団側にも協力してもらい、昨年11月には各球団が実施するファン感謝デー内で沖縄のキャンプ情報をまとめた動画を球場のバックスクリーンで上映。球団と自治体が一体となってファンの誘致に取り組む関係を作り上げた。「県内の人はもちろんだが、県外の人にPRするのが目的。キャンプ以外の目的で沖縄を訪れた人にも、冬季のキャンプ観光を知ってもらい、冬季沖縄観光の目玉の一つに成長させたい」と德嶺氏は語る。

こうした取り組みを続けることで、冬季期間の観光客数は右肩あがりで上昇した。16年時にはキャンプに参加した来場者数は34万人にのぼり、そのうち県外からの観光客は7万900人。経済効果は国内チームのキャンプ分だけで109億5460万円に上る。

球団数、維持できるか

▲宮古島では1993年から22年間オリックスがキャンプを開催。記念碑まで建てられた

一方で、課題も少なくない。一つ目は離島で行われるキャンプだ。離島ではホテルなど宿泊施設も少なく、県外からの直行便も少ない。沖縄本島を経由すれば旅費もかさむため、誘客に向けては高いハードルとなる。

二つ目はキャンプ施設の老朽化と施設不足だ。県内には県営球場はなく、すべて市町村が運営している球場だが、既にほとんどの球場がキャンプに使用されており、新たな球団のキャンプを受け入れる余裕はほぼない。また、複数の球団から球場施設の老朽化が指摘されており、このままではキャンプ地を変更される恐れもある。実際に14年には、1993年から22年にわたって宮古島でキャンプを開催してきたオリックス・バッファローズが、施設の老朽化を理由に宮崎県へとキャンプ地を移した。

德嶺氏は「もっとも重要なのは、県内でキャンプを行う球団の数を減らさないこと。キャンプを開くためには球場だけでなく、ブルペンなどの専用施設も必要だ。しかし、実際に球場を運営している市町村からすると施設の改修などにかかる費用は莫大なので、そう簡単には工事することもできない」と語る。施設の改修については県による補助を期待する声もあり、誘客環境の整備に向けてはまだまだ重い問題がのしかかっている状態だ。


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p1050331 国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平
2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

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