第1回 会場と主催会社【ドイツの展示会は何がすごい?】

▲メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン(東京都港区)ユング氏

東京ビッグサイトより大きい会場がドイツ国内には10カ所

 日本の展示会は経済規模に比べてあまりにも貧弱だ。「オリンピック開催のために、展示会場を閉鎖するなど、海外であれば国民が許さない」は、ビッグサイト問題に対する日本展示会協会の石積忠夫会長の常套句だが、悲しいかな、多くの国民にとって展示会は今日において「別になくてもいいもの」に違いない。

 隣国中国は元気だ。上海では敷地面積世界2位、東京ビッグサイトの5倍の展示会場が2015年に完成した。中国にはビッグサイトより大きな展示会場が12ある。バンコク、ソウル、シンガポールにもビッグサイトより大きな展示会場が続々と造られた。各国が巨大な展示会場を建てて、国策として大規模展示会を誘致する。国の経済を引き上げることにつながると、信じているからだ。

 そのお手本がドイツということになる。日本の展示会関係者に聞いても、多くの人がドイツ展示会の素晴らしさをたたえる。確かに、世界展開する展示会主催会社がいくつもある。メッセ・フランクフルトと、メッセ・デュッセルドルフは、日本に現地法人を置くし、世界最大の展示会場ハノーファー・メッセを本拠地とするドイツ・メッセも、日本能率協会の中に職員が常駐する。

 国内の会場数も多い。ビッグサイトよりも大きなものだけで、こちらも10カ所ある。それぞれの会場が、各産業で世界最大、あるいはそれに準ずる展示会を開催している。

 日本とは国土面積こそ変わらないが、人口で4000万人、GDPも2割ほどドイツの方が少ないのだ。各会場は各主催会社の持ち物だ。デュッセルドルフの展示会場は、メッセ・デュッセルドルフが所有する。フランクフルトや、ハノーファーも同じだ。メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン(東京都港区)のユング氏によると、デュッセルドルフの展示会場で開催される展示会のうち、メッセ・デュッセルドルフが主催するのは全体の6割程度だという。残りは、他の展示会主催会社が賃料を払って使用する。

 メッセ・デュッセルドルフの株主構成を見てみると、筆頭が5割を保有するデュッセルドルフ市、その次がデュッセルドルフのあるノルトライン=ヴェストファーレン州と、デュッセルドルフの民間事業者からなる産業団体が、それぞれ2割を保有する。この3者で9割の株を保有しているのだ。営利を目的とする民間会社だが、メッセを支えるのは市や州、地域の産業界であり、メッセも彼らへの貢献を考えながら経営されているということだ。

 だとすると「そこまで稼がなくてもいいのでは」と邪推したくなるが、そんなことはない。同社は年間500億円前後を稼ぐ、世界屈指の展示会主催会社なのだ。


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎

国際イベントニュース編集長 東島淳一郎

2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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