▲支援会社で働く人やその家族を中心に400人がデモに参加した

「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」がデモを行なったのは、7月2日に投開票を控える東京都議会選挙告示日の前日だった。そこには、選挙に合わせて都民やメディアに、自らの窮状を訴え、状況を打開しようとする業界関係者たちの姿があった。

「明日、都議選が告示される。五輪によってビッグサイトで展示会が開けなくなる問題をマニフェストに入れて欲しい」都庁前でのデモ行進を決行した「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」(千葉県松戸市)の代表、下茂貴樹さんは語気を強めた。参加した約400人のほとんどが展示会の造作や電気工事、リースなどを行う支援会社の社員や家族だという。五輪によるビッグサイトの利用制限が生活の基盤を脅かす問題だと訴えた。

「今のままでは20カ月間利用制限され、うち5カ月間は完全に使用できない。仮設の展示場もあるが、ビッグサイトの4分の1だという。私たちの仕事は大幅に減る。会社の倒産、リストラ、減給。そうした危機が迫っている」

下茂さんは支援会社に勤める会社員だ。これまで都やビッグサイトによる会場問題を巡る説明会には参加しなかった。状況を打開する交渉を幹部に委ねて、日々の現場に向かってきたからだ。だが、危機回避の報告がもたらされることはなかった。

現場を共にする業務委託先の職人が、状況を理解していないことも焦りにつながった。下茂さんから聞いた話で自分の窮状を知る仲間は、今も珍しくないという。「幹部が説明会に参加する我々の場合、まだ話が入って来やすい。だが、個人や数人の従業員で現場を回す会社には、情報が行きわたりにくい。いざとなった時、最も大きな被害を受けるのは彼らなのに」。身近な自分が怒りを表すことで、初めて危機を認識する仲間が大勢いることを考え、デモを決意した。

▲展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会(千葉県松戸市)下茂貴樹代表(46)

豊洲・築地市場と同じ

都議選を前にした行動で、大手メディアを振り向かせることに期待する関係者も多かった。彼らが共通して口にしたのは築地・豊洲の市場移転との対応の違いだ。市場移転はメディアで報じられ続けたため、都側も時間と費用をかけながら専門のプロジェクトチームを組織して話し合いを行ってきた。

だが、ビッグサイト問題はそうではない。東京造形美術(東京都中央区)の石森隆太郎社長は「展示会場のオリンピック利用は、当初のビッグサイトに幕張メッセが加えられ、国際フォーラムに拡大された。だが、その間、各施設で仕事をする展示会の業界団体や個々の会社には何の相談もなく、常に決定事項として伝えられてきた」と話した。

問題がメディアに取り上げられにくい原因について、石森社長は展示会に対する誤解があると指摘する。「『所詮お祭りごと。5カ月間できないくらい大したことない』と思っている人が多いのではないか。展示会は魚市場のように多くの国民が売り買いする商品を扱うとは限らず、毎日開かれることもない。多くの場合、特定の関係者の間だけで取引が成立する商品を集めて、年に1回数日間だけ開かれる。だからこそ額の大きい取り引きが集中して行われる。たった数日だとしても、その業界の人間にとって、展示会は市場そのものなのだ」


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国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平

2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

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