語る風景(3)

「ここは女子トイレ。男子は痴漢とみなします」。大阪駅前の雑居ビルに貼ってある。せっかちな土地柄らしい、決めつけた言い回しだ。脅し文句というよりは、あくまでユーモアとして、ということなのだろうか。

言葉というのは、ときに凶器となる。彼にとっては、冗談では済まされない言葉だったに違いない。2014年5月20日、自動車部品工場で働く鈴木航さん(当時18)は、通勤途中に駅のホームから飛び降り、自殺した。軽度の知的障害と学習障害があった。

小中高と学校を一日も休まない、勤勉な人だったという。そんな航さんが、就職からわずか50日で自ら命を絶った。仕事で使っていたノートには「バカは、バカなりに努力しろ。」とのメモがあった。のちの裁判では、元上司が同じ旨の指導をしたことを明かしている。

障害者差別解消法の施行から1年余りがたつ。偏見は拭い切れていない。「誰よりも/永生きをせん/病める子に/語らねばならぬこと/多く持てば」(島田修二)。言葉の届かぬ場所へと旅立ってしまった命に、胸がふさがる。


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国際イベントニュース 編集部 長谷川遼平

2012年入社。賃貸住宅に関する経営情報紙『週刊全国賃貸住宅新聞』編集部主任。起業・独立の専門誌『ビジネスチャンス』にて新市場・ベンチャー企業を担当。民泊やIoTなど、新産業を専門に取材中。

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