冶金・鉄鋼業の盛んなウラル地域 ロシア ~近くて、遠い国~(第6回)

 欧州とアジアを分けるウラル山脈の周辺では石油やガスなどのエネルギー資源がほとんど採掘されない一方で、チタン、バナジウム、ボーキサイト、鉄鉱石など鉱物資源が豊富に産出される。これらの豊富な資源を活用した冶金産業の拠点となっているのがスヴェルドロフスク州であり、冶金・金属産業、鉄鋼業、加工に活用される工作機械や輸送機器、機械設備などの生産も行われている。

 伝統的に重工業が盛んなスヴェルドロフスク州だが、化学や製薬など産業構造の多角化に向けてインダストリアル・パークやクラスターが設置され、投資誘致が積極的に行われる。

中心都市エカテリンブルクで開かれるイノプロム

 そんなスヴェルドロフスク州の州都エカテリンブルク市で2010年から毎年7月に行なわれている国際的な総合産業見本市が「イノプロム」だ。ロシア最大の産業見本市とうたわれており、16年は95カ国から620社、総勢6万人が来場した。

 主催は16年2月に来日したマントゥロフ大臣率いる産業・商業省であり、過去にはメドヴェージェフ首相などロシア高官はもちろんのこと、メルケル・ドイツ首相など各国首脳も訪れている。15年からは主要な展示や会議を行う「パートナー国」が決められており、15年は中国、16年はインド、そして17年は日本がその役を務める。

 今年のイノプロムは「Smart Manufacturing:Global Approach 」というテーマで行われる。日本が得意とする先端技術を駆使した機械設備の展示や日本文化の紹介などが予定されている。イノプロムに参加する日本の大手工作機械メーカーも増している。経済多角化を目指すロシアだが、工作機械分野は9割近くを海外の製品が占めるといわれ、日本企業にとってもロシアの製造企業に売り込みを図る市場開拓の機会となるだろう。

 イノプロムはロシアにおいて国内最大規模の産業見本市と謳われるものの、国際的な水準では大きな展示会ではないとの評価もある。しかし、資源および自動車分野を中心に発展してきた日本とロシアの関係において、新たな協力の可能性のある分野である工作機械、先端技術、環境技術などの製造業の発展を目指す両国にとっては重要な展示会である。

 また、モスクワやサンクトペテルブルクだけではわからないロシアの地方を知るにも、ウラル地域に足を運ぶことはとても貴重な経験となる。ロシアビジネスの更なる発展、若しくはロシアへの新規参入を検討しているのであれば、イノプロム2017は注目である。

▲(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員
上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶応義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。


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