第6回 「安全」と「お試し」は販売のキラーフレーズ[今日の中国]

 
  • 2019/2/10
▲ 実演販売でスポンジを売る女性、瞬く間に売り上げを上げていきました

 今回は実演販売の話をします。

 日本では昔から実演販売は強い販売チャネルの一つです。東急ハンズさんには実演販売専門担当が置かれています。日本の消費におけるテレビショッピングの割合は質・量ともに高まっていると中国にいる私の耳には入ってくるのですが、いかがでございましょう。

 実は、中国人も実演販売が大変お気に入りです。私の住む廈門では市場が多いこともあって、頻繁に目にします。今日の午後も、市場の外れで20人ほどが取り囲むのを見ました。40歳前後の女性が売っていたのは汚れを落としやすい高性能スポンジです。手元にはスポンジのロールがあり、その場で切り売り販売していました。

 日本であれば、汚れを落とすところを見せて顧客の購買意欲をかき立てるわけですが、彼女は「洗剤が少なくて済むから安全」かつ「切り売りだから少しのお試しから買える」というこの2点のみを強調し、驚異的な売り上げを上げていました。「安全」と「お試し」という中国人の購買意欲を刺激するキラーフレーズを巧みに利用した販売手法です 。

 その場に集う人をコミュニティー化させる技術の妙とも言えます。「安全で少量の切り売りから買える」といううたい文句は「まずは1回買ってみよう。意味がなければ次買わなければいい」という顧客同士の会話を生み出すための誘導線です。「安全」と「お試し」という2つの要素で、その場に居合わせた人たちを共同体にしてしまうわけです。

 土地が広く・人が多い中国において、移動しやすくどこにいっても販売できる実演販売は、即効性のある販売ツールとして利にかなっています。また、中国人は元来コミュニティーが好きなので、顧客にとっても心地の良い買い物手段なのかもしれません。

狩野浩治氏

1964年福岡県生まれ。バックパッカーとして各国を回った後、国内大手小売り会社に入社し海外事業部に配属。以降33年間、海外生活が続き、8年前から中国で生活する。中国企業の副総経理を務める。


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