▲黒川紀章氏が設計したアスタナの中心部

 

世界最大規模の国際展示会である国際博覧会、通称「万博」が、2017年、カザフスタンの首都アスタナで開催される。日本もすでに参加を表明しているが、多くの日本人にとってなじみのない国だろう。今回はカザフスタンという国について、紹介する。▲黒川紀章氏が設計したアスタナの中心部 万博は日本でもこれまで1970年に大阪、1975年に沖縄、1985年につくば、2005年に愛知で行われ、直近では2015年にミラノで開催された。 2017年アスタナ国際博覧会(以後、EXPO2017)は、6~9月に約3カ月の日程で行われる。「未来のエネルギー(Future Energy)」をメインテーマとし、CO2排出削減、省エネルギーの活用、すべての人類のためのエネルギーをサブテーマに掲げる。

 

◆ユーラシア大陸の真ん中

カザフスタンは、今から約四半世紀前まで、当時、世界の二大大国として米国と覇権を争っていたソビエト社会主義連邦(以後、ソ連)の構成共和国の1つだった。1991年末のソ連崩壊により独立国家となったカザフスタンは、ユーラシア大陸のほぼ真ん中、「中央アジア」と呼ばれる地域に広がる。

国土は世界第9位(272万4900㎡)の面積を誇るが、人口はわずか1767万人(2016年)だ。 人口の63.7%をテュルク系民族であるカザフ人が占めるのに加えて、スラヴ系のロシア人も23.1%と一定の割合を占める(2009年国勢調査)。独立後は、カザフ人の人口が増えている。 国家語はカザフ人の母語であるカザフ語だが、ロシア語も公用語として広く使われている。

EXPO2017の会場となる首都アスタナは、独立後1997年に遷都した新首都で、人口はまだ100万人に満たない(87万2000人、2016年)。しかし、かつて何もないステップ地帯であったとは思えない近未来的な都市の様相で、現在は超高層ビルが立ち並ぶ都市になりつつある。この街の都市設計は日本人建築家の黒川紀章氏によるものだ。EXPO2017の開催を控え、都市整備、建設ラッシュに一層拍車がかかっている。

一方、アスタナに首都が移るまでカザフスタンの首都であったアルマトイは、今も国内最大の人口を誇る(170万3000人、2016年)。空港は国際線の発着頻度がアスタナよりも多く、カザフスタンの交通のハブである。日本を含め、外国企業の事務所がアルマトィに置かれることも多く、商業、学術、文化の中心として発展している。

 

◆世界有数の長期政権

1991年12月にソ連から独立を果たして以来、約25年にわたってヌルスルタン・ナザルバエフ大統領が国を主導しており、世界でも有数の長期政権となっている。2016年11月に4度目の訪日を果たしたこともあり、ナザルバエフ大統領の名前を耳にしたことのある人はいるかもしれない。

直近では2015年4月に4度目の大統領選挙で当選を果たしたナザルバエフは、大統領任期の短縮や延長、連続就任制限の撤廃や設置といった憲法改正を行い、巧みに自身の大統領権限の強化や任期の延長を実現している。

こうした政治体制は、欧米などから権威主義と批判される一方で、カザフスタン国民によるナザルバエフに対する支持率は総じて高く、彼の権威と確固たる地位のおかげで、国内の情勢が不安定化することが少なく維持されているという状況もある。

中央アジアの隣国ウズベキスタンにおいて、ナザルバエフと同じくソ連時代から政権を維持し続けてきたイスラム・カリモフ初代大統領が2016年9月に病死したことで、ナザルバエフは旧ソ連国で唯一、ソ連時代から政権を握る指導者となった。とはいえ、まもなく80歳を迎える大統領について健康不安説がささやかれることは多く、後継者問題は常に注目されるテーマである。事実上、国内ナンバー2の地位を占める首相経験を持つ有力政治家や大統領の長女など、後継者候補についての臆測は後を絶たない。

 

◆豊富な天然資源

カザフスタンの広大な領土には石油や天然ガスなど豊富な炭化水素資源が眠っており、中東やロシアに代わる資源供給国として世界的に注目されている。特に、石油生産量は約8000万t(2015年)で世界の1.7%を占める。

独立後、西側諸国が同国の石油部門に積極的に投資を行っている。国内最大規模の埋蔵量を誇るとされるカスピ海沖のカシャガン油田については1990年代に日本も権益を獲得している。

内陸国であるカザフスタンは内海であるカスピ海を除くと海への出口を持たない。

ソ連時代に設置されたパイプラインはすべてロシアが出口となっており、豊富な石油の唯一の輸送ルートとなっている。そのため、1990年代のカザフスタンでは、輸送ルートの多角化、新規パイプラインの建設が重要な課題だった。

カスピ海沖で生産される石油はタンカーでアゼルバイジャンなどを通過し、黒海を抜けて欧州にも運ばれる。完成したばかりの新規のパイプラインは、国内を横断しカザフスタンの西部で採掘される石油を中国へ届ける。ロシア依存から脱却する一方で、中国の参入が著しく、新たな課題となっている。

 

(一社)ロシアNIS貿易会(東京都中央区)中馬瑞貴研究員

上智大学外国語学部ロシア語学科卒、慶應義塾大学法学研究科政治学博士課程。2008年より同社。

関連記事

コメントは利用できません。

全国賃貸住宅新聞社

ピックアップ記事

ページ上部へ戻る