まだやれることは残っている~シリーズ五輪の影②~

▲東京造形美術(東京都中央区)石森隆太郎社長

ビッグサイトで展示会を開催しなくなった時、その影響を直接食らうのはそこで事業を成り立たせているブース制作などの専門会社だ。長年、展示会業界を支えてきた関係者は、オリンピックのために切り捨てられようとしていることへの憤りを語った。だが、その怒りは、これまであまり表に出てこなかった。「ビッグサイトとかまえたくない」取材を拒否した、ある経営者の言葉に理由は集約されている。会場の協力なしでは、日常業務に支障が出るからだ。

業界が小さいからなめられている

「ビッグサイトが盾になってくれればな」東京造型美術(東京都中央区)石森隆太郎社長にも、似た思いがある。説明会や、業界団体の会合に参加して情報を集めるが、東京都やオリンピック組織委員会に、ビッグサイトが業界の窮状をしっかり伝えているとは思えないからだ。

国際オリンピック委員会(IOC)は、雇用を奪ってまでビッグサイトを放送センターとして使用するのか。小池都知事は失われる経済規模の大きさを知っているのか。会場使用の決定権を持つ人に伝えたいと思う一方で、展示会業界が小さいから声が拾われないのか、と無力感に襲われることもある。

ビッグサイトの展示会に関わる業務が売り上げの6割に及ぶ同社も、半減を覚悟しなければならない。3割減まで抑えたとしても、赤字決算は免れられない。社員20人の生活を守るだけでなく、発注先の業者のことを考えなくてはならない。

思い出されるのは東日本大震災だ。3カ月間、ビッグサイトが被災者の避難所になったため、展示会が開催されなかった。その年、売り上げを3割落とした。

何も知らない人に、オリンピック期間中だけ、ほかの仕事をすればいいと言われることもある。だが、「展示会のブースを立てる職人はその専門家なのだ」と、石森社長は話す。「開催期間を安全に使用したあとは、一瞬で壊さなければならない。頑丈に作られていては、当日撤去などできない。そんな職人たちが、明日から家を建てる現場で働けるものではない」

職人への周知も足りないと感じる。時期が来れば、誰かがどうにかすると思っているのか、目の前の仕事に追われているのか「まずいみたいね」と人ごとのような反応に出くわすことも珍しくない。「まだ、やれることは残っている」

 


国際イベントニュース 編集長 東島淳一郎国際イベントニュース編集長 東島淳一郎

2009年全国賃貸住宅新聞社入社。劇団主宰者から銀行勤務を経て30歳で記者に転身。7年間の記者生活を不動産市場で過ごす。2016年9月、本紙創刊とともに現職。

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